元請けが倒産?!資金回収は可能?連鎖倒産を避けるための対処法を解説
【記事更新 】
2021/11/08
中小規模の企業や、受託での事業活動をメインで行っている企業にとって最もリスキーなものが「元請けの倒産」です。元請けが倒産するということは予定していた資金が入ってこないことを意味し、また今後の案件も失注する可能性が極めて高いことを意味します。
このことがきっかけとなり、連鎖倒産という最悪の事態に進んでしまう可能性もあるでしょう。
それでは元請けが倒産した場合、そもそも資金回収は可能なのでしょうか?また連鎖倒産を避けるにはどのような対処法があるでしょうか?
今回は元請けが倒産した場合について、取りうる対処法を解説していきます。
元請けが倒産した時に想定される問題点
まずは元請けが倒産した時に想定される問題を切り出してみましょう。具体的には以下のような問題があり、それぞれ適切に対処対応していく必要があります。
取引量の低下
取引量の低下および売上高の下落は、確実に避けられない情勢と言って良いでしょう。
元請けといっても複数の元請けが存在し、それぞれから報酬・代金が適切に入ってきている状態であれば、さほど問題は大きくありません。
あくまでも取引先・元請けの一つが倒産したというだけに過ぎず、会社運営にさほど大きなダメージが残らない可能性も十分にあるからです。
一方で元請け会社が1~2社程度の、小規模なビジネスの場合は話が異なります。
元請が倒産したことによるダメージは想定しえないほど甚大であり、取引量の低下というよりは取引量がゼロになる可能性も決して絵空事ではありません。
資金難に陥る危険
取引量が低下する=売上が下落=資金難に陥る可能性が高い、ということになります。
この問題が最も危険性が高く、また即座に対処すべき問題でしょう。会社の存続に直結する極めて重大な問題だからです。この問題を切り抜けるにはこの後ご紹介するような
資金調達の方法を検討すると良いでしょう。
元請けの倒産、資金回収は可能か
それではそもそも元請けが倒産した場合、必要な資金について回収は可能なのでしょうか?
ここでは、元請けが倒産した際の資金回収に関するいくつかのトピックをご紹介いたします。
【結論】元請けからの回収は困難
元請けからの回収はほぼ困難だと思った方が良いでしょう。
正確には直近での回収はほぼ不可能ということもできます。
なぜなら元請けが倒産した場合、高い確率で元請けには支払いができるだけの残余資金がなく、また倒産のための各種整理手続きに入っている場合は、特定の企業や支払先に集中して支払いを行うような行為が出来なくなる(※これを偏頗弁済と言います)可能性があります。
これにより元請けからすぐに満額回収ができる可能性は極めて低く、また回収を急ぐあまり恫喝や行き過ぎた取り立て行為を行うと、今度は回収を実行しようとした経営者が罪に問われる可能性もあることを留意しておかなくてはなりません。
銀行からの貸付も黄色信号?
経営に行き詰まった時の銀行や金融機関という考え方もあるでしょう。
しかし金融機関もまた、元請け企業の倒産情報については事前に承知している可能性が高いと考えてしかるべきです。
この場合は銀行からの貸付も黄色信号が灯ることとなってしまいます。というのも、元請けの存在は企業にとって収益の柱とも言うべき存在です。この柱があるからこそ、金融機関は自社に対して貸付を行っているという見方もできるでしょう。
つまりこの収益の柱が大きく崩れようとしている状態では、金融機関は新規に貸付実行まで進めることが極めて難しいというわけです。
仮に取引のある金融機関の支店長クラスの人物がOKを出していたとしても、その上の決裁が下りずに融資非成立(否決)になる可能性もあります。
この場合は融資の相談をしてから一定期間を経て、最終的に否決が出る可能性が高く、この時にはどうにも動きが取れなくなってしまう可能性があります。
ということで基本的には金融機関の融資は検討選択肢の一つに入れておくに留め、他の実効性のある資金調達方法を考えておくのも一つの護身術と言えるでしょう。
連鎖倒産を避けるための資金調達法
それでは連鎖倒産を避けるための資金調達法には、どのようなものがあるでしょう。ここでは実効性の高いものをいくつかご紹介していきます。
銀行からの有担保貸付
銀行は基本的に業績が悪化している企業に対して、貸付を行うことはあまりありません。というのも銀行は無担保融資の場合、企業の業績や代表者個人の信用情報をもとに審査を行う他「術」がないからです。しかし有担保貸付であればまだ、条件が緩和される可能性もあります。
例えば代表者個人の邸宅を抵当に入れて、有担保貸付を受ける方法もあります。
その他、法人名義の工場の敷地を担保にしてお金を借りるといった方法であればまだ、金融機関と交渉のテーブルにつく余地があると言って良いでしょう。
取引先に支払いを待ってもらう
この方法が最も実効性のある方法の一つと言ってよいでしょう。
支払いの資力がないのであれば、支払いそのものを止めてしまうという方法です。
誠心誠意事情を説明し、具体的かつ明確に今後の支払いプランについて提示することで、心ある取引先であれば支払いの猶予にある程度同意してもらえる可能性があります。
その他、満額決済でなくとも一部のみ決済することである程度の日延べを願い出るという方法も考えられます。
しかし取引先によってはそもそもこの交渉を頭から受け付けることがないというケースや、場合によっては交渉には応じてもらえる余地があるものの、条件が折り合わないなどいわゆる満額回答にならない可能性も考慮しなくてはなりません。
出資を受ける
エンジェル投資家や親族から急場をしのぐため、出資を受けるという方法もあります。事業形態によっては融資ではなく出資という扱いで金銭的な援助を受けられるケースもあるでしょう。
ただしこの場合は状況を正確に説明し、理解を得ることが何よりも重要なポイントとなります。あくまでも出資ということになるため、原則として今後金銭的に回復する見込みがある場合にのみプレゼンや交渉ができると言って差し支えありません。
その他原則、出資に対してのリターンを行わなくてはならないため、基本的に融資よりもハードルがやや高い資金調達方法となってしまいます。
また場合によっては出資を受けたものの、満足に返済ができなくなるという可能性もあるでしょう。この場合関係性に「ひび」が入ることは避けられず、その他状況が悪くなると出資者から破産申し立てをされてしまう可能性もあることから、文字通りの諸刃の剣と言って良いでしょう。
ファクタリングを利用する
実効性が極めて高く、さらに早ければ最短即日で金銭的な問題に一定の決着を見ることができる─そんな方法があります。それがファクタリングです。
ファクタリングは従来、手形取引が主流であった日本において最近急速にその制度が整備され規模が拡大している、新しい資金調達方法のひとつです。
銀行融資ではなくあくまでも売掛債権を買い取ってもらうという形の売買契約であることから、基本的に金融機関のような審査を受ける必要はありません。
いわゆる請求書発行済みで入金期日を待っているといった債権がある場合、その請求書を買い取ってもらうようなイメージです。
ファクタリングでは当然手数料が発生するため、請求書額面を満額で受け取ることは不可能です。そのため、半年~1年など恒常的に毎月ファクタリングを利用することは、事業経営において健全な状態とは必ずしも言い切れません。
しかし急場をしのぐという意味ではファクタリングの利用は極めて効果的であり、また経営者の心理的な負担を圧倒的に軽減できる選択肢の一つといって良いでしょう。
このため、元請けが倒産した、もしくは元請けが倒産する予兆が出てきた場合にはファクタリングでいち早く資金調達を行うことが、最も実効性が高く、またスピーディーに事態の解決へ向かうことができる方法と言って良いでしょう。