個人で利用できるファクタリングは違法?事業者向けファクタリングとの違いとは
【記事更新 】
2022/05/24
最近、個人でも利用できるファクタリング業者を名乗る事業体が増えています。一般的にファクタリングが利用できるのは法人に対して売掛債権を持つ法人代表者または個人事業主に限られていましたが、最近になって個人でも利用できると名乗るファクタリングサービスが登場してきたのです。
そこで今回は、個人で利用可能なファクタリングと法人向けのファクタリングについて解説していきます。
※なお結論として、事業を持たない個人の方が使用できるファクタリングサービスは違法操業の可能性が高い、ということになります。
個人向け給与(給料)ファクタリングとは
個人向けの給料ファクタリングという存在がここ数年目立ちます。
給料ファクタリングとは、その名の通り「経営者から従業員が受け取る給料を債権と考え、業者が給料日の到来前に債権を買取る形で手数料を割り引いて先に現金化する」というサービスです。
Q:個人向け給料ファクタリングは違法?
A:違法性が指摘されています。
給料ファクタリングは説明だけ見ると合法的なサービスの様に見えますが、こちらは結論から言うと2020年3月24日、最高裁判所が「給料ファクタリングは貸金業である」と判断したことで違法性が指摘されるようになりました。
この判決以降、給料ファクタリングは違法性があるのか、ということについて様々な議論が巻き起こっています。
しかし総括として、給料ファクタリングの取り立て工程が実質的に貸金業のそれと全く同じものであるという点が争点となったことから、「貸金業者ではない」という主張は否定された形となりました。
この判例により、今後は貸金業者と同様の扱いを受けることになるでしょう。
事実、2020年初頭に多数存在した給料ファクタリング業者も最近は次々と閉業に追い込まれており、今はほぼ使用することが出来ません。
個人向け給料ファクタリングの問題点
個人向けの給料ファクタリングには以下の問題点が指摘されています。
・貸金業に抵触する可能性大
・取り立てが厳しい可能性がある
・個人情報が晒される可能性あり
それぞれ解説していきます。
貸金業に抵触する可能性大
まず、一般的に当社が扱っている様なファクタリングは「事業者向けの売掛債権の現金化」ということで、そもそも給料ファクタリングとは根本から性質が異なります。
個人向けの給料ファクタリングは最高裁での判決以降、貸金業に抵触しかねないとして問題視されており、ほぼ合法的な存在ではありません。
取り立てが厳しい可能性がある
取り立てが厳しく、違法性があるケースもありえます。
基本的に勤務先が債務者となっているわけですから、給料ファクタリングの支払いが履行できない場合、悪質な給料ファクタリング業者は勤務先に連絡したり、何度も連絡してくる可能性もあります。
こうした悪質な取り立て行為は、場合によっては職を失う事態に発展する可能性もあるため、リスクが非常に大きいと言えます。
個人情報が晒される可能性あり
個人向けにファクタリングを行っている業者は、債務者の情報を業者間で共有している場合がほとんどです。(いわゆる闇金同士のデータベースと一部共通しているケースもあります)
その他、申込時に一般的なローンの申込みでは提出の必要が無いようなプライベートな情報や写真などを求められるケースも多く、支払いが遅れた場合、これらの情報が業者間に広まってしまう恐れがあります。そればかりか、Twitterや各種個人情報を晒すタイプのサイトへ実名付きで投稿されてしまうことも少なくありません。
以上のように、個人向けの給料ファクタリングは一般的なファクタリングと比べてリスクが非常に高い
個人向けファクタリングの逮捕事例
個人向けファクタリングの逮捕事例をニュースサイトの記事を元に確認していきましょう。
2021年1月24日、朝日新聞社では以下の様な記事を掲載しています。
給料を受け取る権利を客から買い取り、現金を貸し付ける「給料ファクタリング」を無登録で営んだうえ、法外な利息を得たとして、警視庁は、給料ファクタリング大手「ZERUTA(ゼルタ)」(東京都新宿区)の社長、足立慎吾容疑者(34)=東京都新宿区四谷4丁目=ら男女7人を貸金業法違反(無登録営業)と出資法違反(超高金利)の容疑で逮捕し、14日発表した。同庁によると、給料ファクタリングを手がける業者の摘発は全国で2例目という。
給料ファクタリングは、客が給料を受け取る権利を業者に安く売り、給料を受け取ったら額面通りに買い戻す仕組みで、差額が業者の利益になる。数年前から多額の「手数料」を要求する業者が相次いで社会問題化し、金融庁が注意を呼びかけるとともに、昨年3月、貸金業にあたるとの見解を示した。無登録で営むことはできない。
生活経済課によると、7人は昨年4月、都内の40代の男性ら男女12人に現金74万4607円を貸し付け、法定利息(年利20%)の約14~31倍の利息計18万7533円を受け取ったなどの疑いがある。ホームページで「即日融資に代わる給与ファクタリング」「あなたの強い味方」と勧誘したという。
同社は2018年6月以降、コロナ禍で生活に窮した人も含む全国の約9万7千人に計約50億円を貸し、約13億円の利益を得ていたという。
出典引用:朝日新聞デジタル
この様に、給料ファクタリングは無登録の貸金業者であるとの認定が出ており、原則として違法操業の業者であることを認識する必要があります。
個人向け・事業者向けファクタリングの違い
個人向けファクタリング(違法)・事業者向けのファクタリング(合法)には、以下のような違いがあります。
・債権の違い
・申し込める人の違い
・金額の違い
ひとつずつ確認していきましょう。
債権の違い
まず、一般的なファクタリングは「売掛債権」を「売却」するということですから、売掛債権を持っている会社が対象となります。
一方で、個人向けのファクタリングは「給料」を「売掛債権」とみなしているという点で異なります。ということで、前者の売掛債権の売却には問題がないものの、後者のような給料債権の売却は法律的にグレーゾーン、あるいはアウトとなります。
例えば、経営者が支払い日直前に急に体調不良などで働けなくなり、急遽休業して期待する入金が得られない場合、その分の入金を補填する目的で自社で保有する売掛債権を売却するといった事は実務上よくある話であり、これについては法律上も問題はないとされています。
もっとも、この場合であっても、やはり入金の見込みがない売掛債権については架空債権となりますのでファクタリングの申込みはできません。
これに対して、個人が給料日前に資金繰りが厳しくなり、給料ファクタリングを使用することは現在の法解釈では不可能というわけです。
正確には給料債権の売買そのものではなく、給料ファクタリング業者のあり方が貸金業として認定されていることが直接の原因ですが、いずれにしても給料債権はファクタリング不可とおぼえておきましょう。
申し込める人の違い
次に、当社の様な正規一般のファクタリングについては、主に法人経営者および個人事業主を対象にしています。
ということで、売掛債権を持つ立場にない一般的なお勤めの方については、原則としてファクタリングを利用することはできません。
ただし、兼業サラリーマンで別個に自分の会社を持っており、そちらで売掛債権が発生しているなど特殊な事情がある場合、例外的に個人がファクタリングを利用するケースはありえます。
金額の違い
給料ファクタリングと呼ばれているものは、原則として自身の次月の給料額面以下が利用可能額となり、債権(とされるもの)の額が小さくなる特徴があります。
これに対して事業用のファクタリングは、売掛金が対象となるため、大口の取引が多い印象です。
たとえば、事業用ファクタリングの場合、ある一社への売掛金の総額が1,000万円だとすると、審査によって上限1,000万円のファクタリング契約を結ぶことも可能です。それも当社のような最短即日のファクタリングに対応している業者であれば、その日のうちに現金化が可能です。
貸金業に該当する恐れの高い非常にグレーな存在で、取り立てについても貸金業協会および貸金業法で定めるルールを大きく逸脱し、反社会的で違法性の高いものという可能性があります。
また、事業用ファクタリングは売掛金が債権となるため、比較的高額での取引が多いのに対し、個人向けファクタリングは債権があくまでも給料1ヶ月分となることから仮に利用できたとしても少額のファクタリングしかできないデメリットが存在します。
さらに個人向けの給料ファクタリングは貸金業者と同じような取り立てが行われる可能性が高く、危険であると言えるでしょう。
十分にご注意ください。