アセットファイナンスは誰が使える？ファクタリングとの違いも解説

資金繰りに頭を悩ませる経営者が注目する選択肢の一つに、アセットファイナンス（資産金融）があります。会社が保有する不動産や売掛金などを活用し、現金を得られる仕組みです。

中小企業の社長からは、日々の営業資金や成長投資のための糸口として活用される場合が増えています。本記事では、その基本から活用できる企業の条件、メリット・デメリット、ファクタリングとの違いまでを解説します。

アセットファイナンスの基本を知る

経営の要とも言える資金調達の場面で、会社が保有する財産を活かして資金を確保する「アセットファイナンス」が急速に注目を集めています。

銀行融資で重要視される会社の信用度とは異なり、実物資産や売掛金など実際の財産が大きな決め手となります。特に月間売上が1,000万円を超える中小企業では、資金繰りの選択肢として定着しつつあります。

定義と仕組み

アセットファイナンスは、企業が持つ財産を活かしながら資金を得る方法です。売掛金や建物などを売却または担保に出し、価値を資産化する仕組みとして認知が広がっています。

従来の借入れと違い、経営に不安がある場合でも利用しやすいメリットがあります。

対象となる資産の種類

建物や機械などの有形資産はもちろん、売掛金や特許権といった形のない財産も対象となり得ます。取引先の信用力が高い売掛金なら、より有利な条件で資金化できるでしょう。

知的財産権や船舶、航空機など珍しい資産でも、市場価値が明確であれば仕組みに組み込むことが可能です。特許権などを使ったアセットファイナンスは、新興企業にとって資金を引き出す有力な手段になりつつあります。

コーポレートファイナンスとの違い

コーポレートファイナンス（銀行融資）は会社全体の信用力を基準に審査し、返済義務が生じます。一方、アセットファイナンスでは特定の資産の価値が重視されるという違いがあります。

決算書の内容や業績動向で不利な状況でも、資産にしっかりとした市場価値があれば資金を確保できます。

アセットファイナンスが使える企業の条件

価値ある財産を保有し、短期的に資金が必要な企業、あるいは銀行審査が難しい会社が主な層です。開業から3年以内で実績が少ない、あるいは一時的に業績が落ち込んでいて通常の借入れが通りにくい状況でも、アセットファイナンスなら利用できる場合があります。

保有資産の要件

評価額がはっきりしていて換金しやすい資産ほど有利です。建物の場合は築年数が進むと評価が下がる恐れがありますし、売掛金なら取引先の信用度が見極めポイントです。

土地や建物設備など、汎用性や市場流動性が高いほど資金化しやすいと言われています。

資金ニーズの特性

急いで資金を確保する必要がある、もしくは普通の銀行融資では間に合わない場面に対応する手段として機能しやすいです。

例えば、在庫増や季節変動で資金繰りが厳しくなる業種、または大口取引の支払いサイトが長い業種などが挙げられます。財産を維持するためのコストを抑えつつ資金化できる点も、経営者が魅力を感じる理由です。

アセットファイナンスはどんな企業に適しているのか

開業後まもない新興企業や、財政状況の悪化で銀行の審査に通らない中小企業、あるいは財務体質を改善したい中堅企業が代表的な利用層です。

建設業や製造業、卸売業など、下請け構造がある業種では多くの活用事例があります。大口取引が多い企業や短期資金ニーズが頻繁に発生する企業にとっては、検討に値する資金調達方法と言えるでしょう。

アセットファイナンスを利用する際のメリット・デメリットと注意点

アセットファイナンスは、返済義務のない資金調達手段として経営者にとって魅力的に映る一方、仕組みを正しく理解しないと大切な資産を失ったり、予想以上の手数料負担が発生したりする懸念もあります。

そこで、具体的なメリットとデメリットを整理し、契約前に確認すべき注意点を押さえることで、安全かつ有効にアセットファイナンスを活用できるでしょう。

アセットファイナンスのメリット

最も大きい利点は、自己資本比率を保ちながら資金が確保できることです。会社の価値を損なわずに必要なお金を手にできるうえ、経営状況に左右されにくいため、決算対策や財務改善の一環として使いやすいと言われてます。

金融機関との関係を再建するための足がかりになる場合もあり、実務では柔軟性の高さが注目されます。

アセットファイナンスのデメリット

資産の評価額によって調達できる金額が左右され、思ったほどの金額が得られないリスクがあります。手数料が高くなることも珍しくなく、手続き次第では大切な資産を失う危険も出てきます。

将来の事業計画や財務状況を踏まえずに安易に利用すると、かえって経営の選択肢を狭める可能性もあるでしょう。

失敗しないためのポイント

資産評価は専門家に依頼し、手数料や契約条件を複数社で比較するのが望ましいとされています。法律の専門家に契約書をチェックしてもらい、将来的なリスクを軽減するのも重要です。

業者によっては素早く対応してくれたり、柔軟な条件を提示してくれたりする場合がありますが、その分費用が高くなったり、契約内容が不利になっていないか慎重に確認してください。

ファクタリングとアセットファイナンスの違い

ファクタリングは売掛金を対象にしたアセットファイナンスの一種で、資金化までのスピードが早い点が特徴です。売掛先の信用度で条件が決まりやすく、利用者自身の業績が悪化していても買い取りが可能な場合があります。

手形割引と違って将来の不渡りリスクを利用者が負わない契約形態も多く、急に資金が必要になった際の手段として重宝されています。

仕組みの根本的な差異

ファクタリングは売掛金のみを対象とする一方、他のアセットファイナンスでは不動産や知的財産など多様な資産が対象です。審査の仕組みが根本的に異なります。

また、ファクタリングは必要書類が少なく、短期で資金化できる利点がある反面、契約条件しだいで手数料が高くなる傾向があります。

審査基準の違い

ファクタリングでは、売掛先の信用力が審査の中心です。大企業を取引先に持つ場合、信用リスクが低いと判断され、条件が有利になることが多いでしょう。

利用者本人が金融機関のブラックリストに載っていても、売掛先が健全であれば利用できる可能性があります。

コスト面の比較

ファクタリングの手数料は2～20％程度と幅が広く、不動産担保の借入れや一般的な融資と比べて高めになることもあります。それでも入金タイミングを早められるメリットが大きければ、事業を継続するうえで有効な選択肢となるでしょう。

業者によっては追加手数料や事務費用が発生するケースもあり、契約書をよく確認して見積もりを比較することが大切です。